普門寺堂頭中川正壽
中川普門堂頭
私がドイツで布教を始めて37年目となる2016年に普門寺は創立満20周年を迎えました。月日の経つのは早いものです。この間ご協力、ご支援、適切な助言、ご指導を頂いてまいりました皆様方がおられたからこそここ迄続けてくることができました。
理想だけに燃え、ドイツの事情もよく知らずコネもなく言葉も話せないのにドイツにやって来た私が、アルプス台地の自然の中に建つ完全改装の必要な旧ホテルを買い取って始めた普門寺も皆様の暖かいご援助に支えられ、小規模ながら伝統にのっとった函櫃(寝具を入れる戸袋)を備えた禅堂も作ることもでき設備もある程度整いました。
まだまだ自分の力や能力の足りなさと向き合うことが多い毎日ではありますが、ゆっくり少しづつここドイツに普門寺を通じて道元禅師の教えは広がりつつあります。
普門寺10周年の際には晋山結制式や記念法要などさまざまな行事も同時に行われ、日本から250名になる多くの随喜御寺院、一般参列者の方々がお忙しい間を縫ってご参加くださり今でも本当に感謝の念に耐えません。
2016年には宗門の動きとして海外で初めて常設認可専門道場となる北米カリフォルニアの天平山禅堂の僧堂落慶の式が行われました。これは私ども国際布教師また各国参禅者にとりましては悲願の実現であり誠に素晴らしいことです。当寺をご支援いただいている有縁の御寺院方の中にも北米天平山にご随喜なされる方が多くおられたためこの度の20周年記念にあたり普門寺として前回のような日本の方々を対象とした特別な法要などを私どもの方から組むことは控えさせて頂きました。
普門寺の20周年を記念した行事は2016年9月3日に行われました。
午前中に本尊上供、サンガメンバーへの先祖供養と三基の塔の安置式典を行い、午後にはもみじ祭りが行われました。文化プログラムとして日本から三曲合奏と長唄の演奏と踊りもご披露いただきました。
普門寺は近年体制を一新しました。現在スザンネ・モッツが運営責任者として寺を切り盛りしてくれています。スザンネは4月23日に出家得度を受けて「正然」となりました。
またサンガのメンバーの中心となる山内メンバーがコースの運営や講師役として積極的に参加してくれるようになり、メンバーの自覚や普門寺への帰属意識も以前より増してきております。
様々なコースを行う事が普門寺の活動の中核をなしておりますが、それらコースの参加者数も着実に増加しつつあり、木曜から日曜までの週末摂心や恒例の年末レトリート等で定員を大きく超える申し込みがあります。
禅のコースとしては年間を通じ複数回行われる週末摂心、六日間摂心、作務摂心、大乗仏典、道元禅師の教えなどを掘り下げるスタディ・コースや堂頭が提唱する正法眼蔵会など充実した内容の禅のコースを行っております。また毎週誰でも参加できる定期参禅会や出張指導や講演など地道な布教活動も続けています。
毎年冬に行う打坐に専念する正味100日の「安居」もさすがに通しで参加できる人は多くはありませんが、2週間の蝋八摂心や3週間の涅槃会摂心は大変好評です。この安居期間中は基本的に常摂心として会話や外出も禁止で、毎日3時前に起床し、通常1回45分の坐禅を3時30分より1日10回、摂心では3時15分より14回務めます。またこの期間に5日間の眼蔵会を設け提唱を致します。私は「ただひたすら坐る」「人間だから坐禅する」の信念のもとに歩んでまいりましたが、ようやくこの頃はこの普門寺に集う同行同修の友人が増えてきました。喜ばしい限りであります。
日常の活動に忙殺され日本語ホームページの更新がなかなかできないため、最新の情報やプログラムなどは申し訳ありませんがスタッフが常に更新しているドイツ語や英語のホームページの方をご参照ください。www.eisenbuch.de ここをクリックして英語かドイツ語をお選びください。
現在の激変するヨーロッパの中で人々は心の平穏を求めて普門寺を訪れてきます。仏法修行をもって人々と社会に安らぎと励ましを与え、人々がともに生きる喜びに満たされるようにお手伝いできる世界に開かれた本格的な坐禅道場を実現すべく、今後とも一層の努力を重ねていく所存でございますので、これからも一層の御指導ご鞭撻のほど心よりお願い申し上げます。
合掌
西暦2016年 平成28年9月10日
中川正壽 九拝