アイゼンブッフ禅センター

普門寺の歩み

 

 1979年(昭和54年)の渡独以来、長年にわたりドイツを中心に布教活動を続けてきた中川正壽老師は、悲願であった本格的な坐禅道場を設立するために、1996年(平成8年)にミュンヘン近郊南ドイツの地の古いホテルを買い取りました。

元農家を改築して造られた小さなホテルで、できれば解体して新築した方がよい程の老朽家屋でした。

日本と異なり、土地や建物の使用目的に著しい規制のあるドイツで、宗教法人としての使用が可能で、ある程度以上の規模があり、しかも第3者を宿泊させる許可のついた建物を探す、またはそのような建物を建設できる許可の付いた土地を購入するのは大変困難なことでした。

これぞという物件にめぐり合えぬまま数年が過ぎていたある日、現在の普門寺の建物に出会った老師は、「ここを坐禅の修行道場にするために自分は生まれあわせてこのドイツに来たのだ。」いう強い思いを感じ、すぐに購入を決意しました。

庭から普門寺別館を眺める。

庭から普門寺別館を眺める。

購入資金はあっても、その数倍かかりそうな改築費のめどは立っていませんでしたが、中川老師はこの試練を乗り越えることが、達磨大師の9年面壁にあたるのだとの強い決意で、各方面に寄付を募りながら、常住修行者を中心に改築・改装作業を行い、少しづつ禅センターとしての体裁を整えていきました。

 仏教・キリスト教という宗派の違いを超えて、特に日本仏教の禅宗を評価するカトリックのニーダーアルタイヒ修道院のユングクラウゼン修道院長(当時)や、聖オッティリエンのヴォルフ大修道院長(当時)などから理解と支持をいただき、交流に理解を示してくださった地元市長や神父が普門寺のイベントに参加してくださった頃から、当初いぶかしげに見ていた地元の人達の警戒心が解けていきました。

 大本山永平寺七十八世宮崎奕保禅師には、それまでの布教活動と、本格的な禅道場の設立や布教にかける情熱を評価していただき、海外寺院としては珍しい永平寺直末の寺院にしていただきました。そしてそれ以降御遷化なさるまで、普門寺の活動を常に支えてくださいました。

宮崎禅師と共に。左が中川老師。右がルート妙智ヴェッカー。 2004年10月21日永平寺にて。

宮崎禅師と共に。左が中川老師。右がルート妙智ヴェッカー。
2004年10月21日永平寺にて。

 普門寺がここまで発展してこられたのは、このような数え切れぬほど多くの方々の物質的、精神的なご支援、ご協力、そして献身奉仕のおかげにほかなりません。

 これからも、仏教文化を土台としていない人々に、正身端坐・直心端坐の坐禅修行を根幹に、霊性・精神の覚醒と心身のバランスの取れた「直心」の根本精神を一人でも多くの人に広めていくため、様々な模索を重ねながら普門寺は歩み続けていきます。

 

年表で見る普門寺の歩み

1996年
(平成8年)
10月

普門寺アイゼンブッフ禅センター開所式。

大本山永平寺より、金原東英講師(当時)、またSOTO禅インターナ
ショナルより大谷有為老師が御随喜くださいました。

興味のある人は誰でも参加でき、多彩な文化プログラムも催す紅葉
祭りをこれ以降毎年10月に開催。

別館のホテルの客室だった部分を宿泊可能なセミナーハウスにする
工事の開始。その間の臨時措置として、納屋を禅堂に改装。

作務として常住修行者を中心にした改修・改築が始まる。

12月

第一回臘八接心。

これ以降普門寺で定期的に様々な接心と禅のコースが始まる。

1997年
(平成9年)

本館の改修工事を始める。

秋には上下水道配管工事、新暖房設備の設置工事。
(第一次暫定工事)

作務

作務

1997年
(平成9年)
 6月

拝請開山の允許。

曹洞宗管長大本山永平寺七十八世宮崎奕保禅師より拝請開山
の允許を賜りました。

10月

入仏開眼法要。

大本山永平寺御専使天藤全孝後堂老師(当時)を導師として厳修
されました。

1998年
(平成10年)

別館セミナーハウスの全面改修工事を始める。

プールは本堂に、サウナと道具室は食堂兼ホールに改築。

 9月

本堂落慶。

大本山永平寺南沢道人監院老師(当時)御一行を迎えて落慶の
祝典が行われました。

10月

別館落慶式典。

地元市長・修道院長・神父・地域の人々や参禅者に加え、日本から
も多数の法縁・法友のご寺院方々にご随喜いただきました。

1999年
(平成11年)

一日参禅会や夏安居(1ヵ月)が始まる。
以後毎年定期的に開催される。

本館第二次暫定工事

 9月

ドイツ普門寺道元シンポジウム。

高祖道元禅師御生誕八百年を記念し、道元哲学の専門家エルバ
ーフェルト博士を迎えて、普門寺として初めてのシンポジウムを開催。

ベルリンなど遠方からも多数の参加がありました。

2000年
(平成12年)
 7月

袈裟接心

一宮成福寺の久馬慧忠老師をお迎えし、袈裟把針の意味や日本の仏教精神的な伝統の紹介と接心が行われました。

 9月

絡子ゼミナール

名古屋妙元寺のご支援により、観音寺の坂巻智光師の指導の下、意味の説明を受けながら絡子を縫うセミナーを開催。最後に普門老師により、4名の参加者に五戒の授戒の儀式が行われました。

2001年
(平成13年)

キクイムシにやられていた本館屋根の取り替え。
この時屋根を70センチ上げて、屋根裏の高さを高くしました。

2002年
(平成14年)

長期スタディーコースの新設。

本格的に仏教参究を深めたいという要求に応え、数年単位で継続
して参究していくコースの開始。

「インド仏教‐般若心経」「中国禅仏教‐信心銘」「日本曹洞禅‐道
元禅師・正法眼蔵」の3講座をまず開講。

これ以降試行錯誤を繰り返しながら、発展していく。

スタディコース

スタディコース

2002年
(平成14年)
10月

高祖道元禅師七百五十回大遠忌慶讃

酒井得元大和尚七回忌法要

多くの法友・法縁の御寺院のご随喜の下、普門寺にて大本山永平
寺御専使国際部長松永然道老師(当時)の導師にて七百五十回
忌慶讃を厳修していただきました。

堂頭の恩師である酒井得元大和尚の七回忌法要では、泉岳寺住
職小坂機融老師に導師をお勤めいただきました。

2004年
(平成16年)
 5月

仏教の止観に基づく「瞑想と健康」講座の第一歩として、ルート
妙智ヴェッカーによる「経絡フロー」(仁神術)コースがスタート。

以後、坐禅を土台に「目覚めと健康」をテーマに様々なコースに発展
していく。

2005年
(平成17年)

本館抜本改築工事。

屋根裏を改築して32単(1畳20単、半畳12単)のある僧堂の完成

 ドイツの人気TV番組Delta出演時

ドイツの人気TV番組Delta出演時

2006年
(平成18年)
 5月

普門寺創立10周年記念フェスティバル開催。

4日間にわたり、禅文化シンポジウム、坐禅、文化プログラムから
なる記念行事が行われました。

自性院の鈴木道雄老師のお力添えで秋田三曲連盟と同県有志の
御寺院による詠讃邦楽コンサートが実現。

日本で活躍されている書道家の御園平氏も応援にお越しくださいま
した。

 9月

晋山結制。

欧州から100名以上、日本から160名の随喜御寺院、参列者の
方々を迎えて、普門寺堂頭中川正壽老師の晋山結制が行われま
した。

西堂・結制助化師は泉岳寺住職小坂機融老師。

また、同時に僧堂開単式も行われました。

首座玄法ハーンさん、書記岩手龍泉寺徒弟の石亀良道さん、弁事
下川禅勝さんを中心に、如法に三ヶ月安居が修行されました。

普門寺創立10周年慶讃報恩法要として導師東京観音院来馬
正行老師、永見寺葛西好雄老師をはじめとする東京観音院懺法
会御寺院の方々に「観音懺法」をご修行頂きました。

普門寺御開山不老閣猊下宮崎奕保禅師御真像の開眼法要
導師を北海道中央寺住職南澤道人老師にお勤めいただきました。
この御真像は中央寺様よりご寄贈頂いたものです。

法要後、奈良康明元駒澤大学総長と、東京泉岳寺住職小坂機融
老師に10周年記念講演を行って頂きました。

横浜善光寺の故黒田武志老師が生前に寄贈を約束してくださって
いた観音菩薩像地蔵菩薩像が完成し、届けられました。

その開眼法要式典が神奈川県成願寺山口晴通住職を導師に、ご
子息の黒田博志善光寺住職を侍者に行われました。

2008年
(平成20年)

それまでのサンガ活動をいっそう発展させ、お互いの修行向上の
ため組織化した「正法会」サンガ(サッダルマサンガ)を結成。

これにより各地の中川老師指導の参禅会は正法会の支部となり
ました。

 6月

バイエルン州主催で州が厳選した庭を1日無償で一般公開するイベ
ント「オープン・ガーデンの日」に、造園業のプロでもある下川禅勝
さんが作務として造園した普門寺の庭園の評判を聞いた州から公開
要請がありそれを受諾。
1日で2400名が普門寺の庭を訪れました。
庭に禅のインフォスタンドを設置し、茶道などの文化プログラムも
準備して臨みました。

長年にわたり何度も新聞等メディアで報道されていた普門寺に関心
はあっても躊躇していたという人たちが、この機会に多く足を踏み入
れてくださり、全般的にも好評で、有意義なイベントとなりました。

またこのイベントの前後にも、新聞は普門寺を大きく取り上げてくれ
ました。

123

 

2009年
(平成21年)

永見寺葛西好雄老師と川畑祥子さんによる絡子把針指導。

ミュンヘン参禅会はミュンヘン正法会参禅会としてサンガ・メンバー
により継続。

サンガ・メンバーと山内メンバーだけによる専門訓練・修行のため
山内摂心の開始。

2010年
(平成22年)

ひたすら打坐に専念する常接心、臘八接心、涅槃会接心などを組
み合わせた長期禁足安居修行の導入。

普門寺御開山の故宮崎奕保禅師に戴いた御遺金で奨学金制度を
設立。

2011年
(平成23年)

日独政府主催の日独交流150周年記念行事に普門寺主催の春祭
り、秋祭りで参加。

 6月

バイエルン州の要請で州が厳選した庭を1日無償で一般公開するイ
ベント「オープン・ガーデンの日」に再び参加。今回は1日で3年前を
しのぐ3000人の人が普門寺を訪れる。

 9月

「聖エジディオ共同体」主催の『第25回世界宗教者平和の祈りの集
い』にて日本曹洞宗の代表としてスピーチするなどこの年も積極的に
外部での講演活動を展開。