アイゼンブッフ禅センター

玄法ハーンさんインタビュー

玄法ハーンさんへのインタビュー

 

 普門寺専属の講師として、中川老師と共に、長期スタディコースの講義を担当している玄法ハーンさんに、普門寺について語ってもらいました。

玄法さんは普門寺の正堂であり、小浜妙徳寺の古坂龍宏老師の下で得度を受け、晋山式では主座として法戦を務めました。

このインタビューは2006年に行われたものです。

 

クリストフ玄法ハーンさん

クリストフ玄法ハーンさん

どうして宗教に興味を持つようになったのですか?

熱心なキリスト教徒の子として、小さい頃から教会と密接な関係で育ちました。

敬愛する先生に、哲学と宗教の疑問を結び付けて考えるようにと言われたのをきっかけに、子供ながらとても真剣に宗教について考え始め、徐々にキリスト教のやり方を否定するようになり、それに変わる道を探し始めたのです。

 

どんなきっかけで20年前に中川老師に出会ったのですか?

 信ずる事のできる道を見つけようとかなりの期間勉強と模索を繰り返していくうち、すべての物と関連付けられ、肉体を使い自己を完全に鍛練する方法こそが正しい道に導いてくれると確信するようになりました。

その実践方法として瞑想が最適だと考えたので、まず様々な瞑想方法の比較検討が必要と、異なる仏教宗門の扉を次々たたいていくうちに、中川老師に出会いました。

 

それ以来老師と共に歩んでこられましたが、中川老師のどこが特別なんですか?

真剣さ。全く妥協をしないという姿勢。

自分の実存、師の育った基盤、仏教自体にすら疑問を投げかけ、仏陀がそうであったように、実践し、納得するまで人の見解を安易に受け入れない姿勢。

禅センターでの実践こそが老師の人生なのです。

この人のもとでなら真正な道にたどり着けると信じられたからです。

 

普門寺を建ちあげるのはかなり大変だったと聞いていますが?

多くの人が寄付・作務で協力してくれましたが、雨漏りはする、カビは生える、トイレは臭い、お風呂はないと最初の5年間の建物の状態はとても悲惨でした。

ぼろ家を買い取って作務で改修・改築といってもお金もない。

作務で疲れ果て、精神的な修行ができない、自分達は安価な労働力として利用されているだけではという不満すら聞こえてきて、苦しい時期でした。

でもそんな時でも接心や、セミナーはずっときちんとやってきました。

今では笑い話ですが、お金がないから、じゃあせめて内装だけでもと、壁と天井を塗り直した直後、日本からの寄付で急に屋根が取り替えられる事になり、喜んで屋根をはずしたら突然大雨に見舞われ、せっかくきれいにした内装がまた駄目になったこともありました。

 

ハーンさん(右)は普門寺の晋山結制式では見事に首座を務めてくれました。

ハーンさん(右)は普門寺の晋山結制式では見事に首座を務めてくれました。

本格的禅堂の建築が始まったそうですが?

寄付がある程度集まったので、必要に迫られていた上下水道の改修を始め、それにあわせ、本館の屋根裏部屋を改装して、小さいながらも、日本の伝統にのっとった函櫃を備えた本格的な禅堂を作ることになりました。

これは長年の老師の夢で、資金繰りのため長期待つより、できる範囲で今作った方がいいという事で踏み切りました。

ヨーロッパの人にわかりやすい形で、精神性を提示するにもこういった禅堂は効果的だと思います。

2005年に完成の予定ですが、これで伝統に根差した修行を行う場ができると、皆楽しみにしています。

 

他のヨーロッパの仏教センターとの違いはありますか?

 ほとんどの仏教センターが外部から講師を呼んでコースをするのに対し、普門寺は、日本で本格的修行を積み、曹洞宗住職の資格を持ち、ドイツに25年以上住み布教活動を続けている日本人の中川老師が、寺に住み込み、企画にも携わり、ドイツ語で他の講師と共にコースを行うという、ヨーロッパでも現在他に類をみないやり方で運営されています。

このため、当地の人々の要請に適った高い質の修行・仏教講座が行えます。

また、希望者は普門寺に住み込み、作務に携わりながら仏教の実践ができるのも特徴です。

 

キリスト教文化圏の人たちがなぜ普門寺に来るんでしょうか?

ここに来る人のほとんどは日常のストレスから逃れ、心の安らぎを得るために来ます。皆それなりに問題や、自己の生き方に対する疑問を抱え、答えを求めています。

禅や瞑想でまず、問題に誠実に取り組む方法を学ぶうち、他の人も同じような問題を抱えている事に気づいていきます。

古典仏教のテキストを自分の人生として学ぶことで、それ迄の考え方や否定的感情に働きかけ、視野を広げ、心を開いていく事で、新しい人生の方向性を見いだしていきます。

 

普門寺にできることは何でしょうか?

欧州文化を否定し孤立するのでなく、地域に密着し、宗教の枠を超えた出会いの場を提供すること。

この精神的に荒れた時代に、坐禅により心の栄養と方向性を与えること。

仏教的瞑想や坐禅で精神と身体を再び直接触れさせ、自己や社会に対し責任を持って生きていける「道心」が育つよう導いていくこと。

仏教精神菩薩の誓願に根ざした人材の育成を通じ、地域社会に奉仕すること。

 

 

 

近年ホスピスやガン患者の自助などの活動も増えているようですが?

普門寺の基本は一般・常住修行者育成ですが、仏教文化の基盤を持たない欧州では禅を中心とする仏教基礎教育も不可欠で、セミナーは重要です。

また現代人のニーズに応えるため、セミナーハウスで仏教を基盤とした心身の癒しを中心とする様々なコースを行っています。

セミナーハウスと禅ハウスは活動内容からも財源面からも互いに補充し合う形になっています。

 

長期スタディーコースの手応えはどうですか?

コースの前にはサンスクリット語の原典を読み返して解釈の仕方やドイツ語訳とその説明の仕方を検討したり、準備は大変ですが、今までの仏教講座に物足りなさを感じ高い質を求めている受講者の大きな期待を感じるのでやりがいがあります。

共通の関心で結ばれた一つのグループとじっくり長期にわたり、道元の教えを深めていけるのは大変やりがいのある仕事です。

私が中川老師と一緒に担当しているのは「インド仏教(般若心経)」「中国仏教(信心銘)」と「日本仏教(道元-正法眼蔵)」です。

この試みも5年目を迎えました。評判を聞きつけて、新しく参加してくれる人たちも受け入れながら、これからも一層充実させていく覚悟です。

 

なぜ『音楽と霊性』と銘打った講座を普門寺で行ったのですか?

子供は音楽家になるのが当然という音楽一家で育ったので、子供の頃からバイオリン・ピアノ・トランペットを習い、当然のごとく教会の合唱隊で歌い、音楽につつまれて育ちましたが、父が教会の合唱指揮者だった事もあり、私にとり音楽はいつも宗教と密接に関連したものでした。

そのせいで、一時距離をおこうとした時期もありましたが、大学に進学する時には、哲学と並んで迷わず音楽も専攻しました。

道元禅師が何度も繰り返し、山の音や川のせせらぐ音を聞く事に言及されているように、美しい音を聴くと意識が覚醒され、頭が澄んできます。

仏教講義や瞑想だけでなく、例えばグレゴリオ聖歌、バッハ、古典尺八からインド伝統音楽、イスラム瞑想音楽迄、厳選された音楽を意識的に聴く事で、新しい精神的境地を経験してもらいたいと思い講座を企画しました。

好評なので今年で3年目を迎えました。

 

普門寺10周年を迎えどんな御気持ちですか?

手探りの努力を重ねているうちにもう10年もたってしまったのかと感慨深いものがあります。

やっと本格的な禅堂もでき、これからいよいよ普門寺は本格的なスタートを迎えることができると思っております。

 

 

お忙しい所ありがとうございました。今後のますますの活躍をお祈りしております。